ネバー・ギブアップ

     2008-05-02 : フィクション
 「そうねぇ、、、食べられちゃった時は、さすがにもう駄目だと思ったわ」とニンフのミント嬢。「人生、こんなことも起こるのだと、つくづく思ったのよね。最後まであきらめちゃいけない、ネバーギブアップなんだって」

鶴と蛙

 道端に転がっている、どんなに小さな石でさえ、数十億年の歴史を背負っている。あなたが今、蹴飛ばした小石も、45億年前、宇宙の塵が集まり、太陽系が形成されつつあった時代に、地球に飛び込んできた、星のかけらかも知れない。

 実際、私達の体を構成する元素も、呼吸する酸素も、遠い昔に、ヘリウムを原料として恒星の核融合反応の中で生成されたものである。この恒星の寿命が尽きた時、超新星爆発を起こし、ばら撒かれた物質、これがやがてまた集まり始め、太陽や地球を作り、植物や動物を作り出したわけである。

 そんな悠久の時に思いをめぐらせていると、今、私が宇宙のこの場所、この時間に存在することについて運命と言うものを感じざる得ない。運命とは予測できない驚愕のロマンである。

 どんな小石にも粛々と従ってきた運命があるように、道端の雑草にも思いがけない運命が待っていることがある。あなたの想像力を駆使して、このミントの葉に起こったことを推理して欲しい。

マリークロードのデザート


 母の退院祝いを兼ねて、母の娘と一緒にフレンチを食べに出かけた。美味しくいただいた料理の最後に出てきたデザート、生クリームの上に可愛いいシャーベットが二つ。そこには彩りよくミントの葉も飾られている。

 さて、このミントの葉に、これから何が起こりうるか、考えてみよう。食われちゃうとか、ディスポーザーの藻屑となってしまうとか、たいして面白い運命は待っていなさそうだと思ったあなた、想像力不足と言うしかない。

 ひそひそと娘と話をしていた母は、生クリームがいっぱい付いたミントの葉を、口にほおばった。やっぱり食われちゃったのかと思ったあなた、想像力不足と言うしかない。

 口の中できれいにミントの葉についていた生クリームを落とすと、母と娘はティッシュペーパーを取り出し、水でぬらし、その葉を優しく包む。その悪戯っぽい目はなんだ。

 家に帰り、丁寧にティッシュペーパーから取り出されたミントの葉は、早速プランターに挿し木された。毎日、毎日水をやり、これが一ヵ月後のあのミントの葉である。

挿し木されたミント

 運命はあなたに、想像をはるかに超えた未来を用意しているかもしれない。ネバー・ギブアップ。



ref:「僕らは星のかけら」マーカス・チャウン、無名社/SB文庫

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Unknown

久々に(!)格調高い文章と素晴らしいお話で感動です。
美しいお話に心洗われるようでした。
彼女の人生も捨てたものではありませんね。
ハッピーエンドはいつも待っているもの・・・

あぁ・・・
そもそも私もこんな感じのステキなブログを綴りたかったのです・・・

時すでに遅し・・・(泣

はいはい、久々です

panco様
 昔、このブログのことを「某国営放送の教育バージョン、もしくは雑誌『暮らしの手帳』風」と言われたのがトラウマとなり、芸風を変えようと必死の努力をしてきたのですけれど、やはり爪は隠せないものですね。気をつけないと痴性がほとばしってしまいます。

panco様のブログ、本文の軽快なリズム、軽妙なコメントのやり取りを楽しませていただいています。まさに、本文とコメントが一体となって、ひとつの作品になっています。私の目標としている、インターネットの双方向性、即時性特を生かしたスタイルをもう確立したと言えますね。うらやましー。

おっと、また痴呆がほとばしってしまった。
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